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遺言書のトラブル事例7選|司法書士が教える防ぎ方と対策

「遺言書を残せばトラブルは防げる」と思われがちですが、実は遺言書があることが原因でかえって揉めてしまうケースも少なくありません。

結論から言うと、遺言書のトラブルは「書き方の不備」「遺留分への配慮不足」「作成時の意思能力」「作成後の状況変化」など、いくつかのパターンに分けられます。事前にどんなトラブルがあるのかを知っておけば、作成時に対策を打つことが可能です。

今回は、杉並区を拠点に相続・遺言・終活支援を専門とする司法書士法人あかつき総合法務事務所の小林先生に、実務で出会った遺言書のトラブル事例と、その対策についてインタビューしました。これから遺言書を作ろうと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

遺言書でよくあるトラブルの事例【司法書士に聞いてみた】

──自筆証書遺言で実際にトラブルになった事例はありますか?

小林先生:守秘義務があるので正確な文言や場面を説明することはできませんが、自筆証書遺言で解釈に困ったことはございます。

たとえば、「○○○が意思表示をできなくなったら、●●●に財産を相続させる」と自筆証書遺言に書かれていた場合、「意思表示ができなくなった」とは具体的に何を指すのか、明確にすることはできませんよね。

この遺言書で伝えたかったことは、おそらく「○○○は病気がちで、もし自分が亡くなったときにもう既に○○○が自分でお金を引き出せる状況じゃなくなっていたら、あとは●●●にお願いしたい」ということだったと思います。

しかし、自筆証書遺言だと、これを正確に表現することが難しかったのだと思います。

その点、公正証書遺言であれば、「○○○が成年後見制度を利用していた場合には…」「○○○の療養看護をなすことを条件に…」などの文言を付け加えることによって、遺言者の意向を達成できたのだろうと思います。

このように、何か特別な想いや複雑な事情がある場合には、自筆証書遺言だとその達成が難しい場合もあるといえるでしょう。

──では、公正証書遺言でも防げなかったケースはありますか?

小林先生:当事務所のお客様ではおりませんが、一般的には「遺留分」や「公正証書遺言作成時に意思能力があったのか」が問題になるケースがあるといえるでしょう。

特に遺留分については、それを侵害する場合でも遺言書自体が無効になるわけではありません。作成をお手伝いするときには念入りに遺留分についてお話しいたしますが、結果として遺言書を作成する方の意向であれば、それを妨げることはできません。

一方、「公正証書遺言作成時の意思能力」についても、公証人は作成日に一度しか顔を合わせない場合も多く、公証人が証明するのは「遺言書作成時点の意思能力」のみです。そのため、「遺言書を作成するときには意思能力は無かったはずだ」という議論が生まれうることはあるかと思います。

また、公正証書遺言に限りませんが、遺言書はあくまでも「亡くなった時点」の対策であるため、作成してから亡くなるまでの間に発生した出来事(相続させようとした方が亡くなってしまったなど)によっては、遺言書自体が意味をなさない場合もあるでしょう。

ですから、遺言書はこういった状況を想定できる専門家に依頼したり、一度作成して終了ではなく、何かあった場合にすぐに相談できる専門家に依頼したりしてほしいところですね。

遺言書のトラブル事例7選|実際に起きているケースを紹介

インタビューでも触れられたように、遺言書のトラブルにはいくつかの典型パターンがあります。ここでは実務でよく起こる7つの事例を紹介します。

事例①:曖昧な表現で解釈が割れる

「自宅は息子に、別荘は娘に相続させる」といった曖昧な表現は、後々のトラブルの火種になります。

「自宅」とは建物だけなのか、土地も含むのか。息子や娘が複数いる場合、誰を指すのか。別荘が複数あれば、全部なのか一部なのか。こうした解釈の余地がある書き方は、相続人同士の争いに発展しがちです。

小林先生のインタビューで紹介された「意思表示ができなくなったら」という表現も、このパターンです。「意思表示ができなくなった状態」を客観的に判断する基準がないため、相続人の解釈次第で結論が変わってしまいます。

対策:不動産は「○○県△△市●●区○○1-2-3」のように具体的な住所で特定する。受遺者は氏名・生年月日・続柄まで明記する。条件付きにする場合は「成年後見制度を利用していた場合」など、客観的に判断できる基準を示す。

事例②:遺留分を侵害して揉める

「全財産を長男に相続させる」といった極端な配分は、遺留分トラブルの温床です。

遺留分とは、配偶者・子ども・直系尊属(親など)に法律で保障されている、遺産の最低限の取り分のことです(民法1042条)。兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分を侵害する遺言書でも無効にはなりませんが、侵害された相続人は遺留分侵害額請求を行うことができます(民法1046条)。請求されれば、遺留分相当額を支払わなければならず、「せっかく遺言書を残したのに、結局争いになった」という状況になりかねません。

対策:遺留分の割合を事前に確認し、可能な限り侵害しない配分にする。やむを得ず偏った配分にする場合は、付言事項で「なぜこの配分にしたのか」を丁寧に伝えることで、請求を思いとどまってもらえるケースもあります。

事例③:作成時の意思能力を争われる

小林先生が指摘した「公正証書遺言でも防ぎきれないケース」の代表例です。

遺言書は、作成時点で遺言者に判断能力(意思能力)があることが前提です。認知症の症状が出ていたり、体力が衰えて意思表示が曖昧だったりすると、後になって「遺言書作成時には意思能力がなかったはずだ」と主張され、遺言書の有効性が争われることがあります。

自筆証書遺言の場合、作成の瞬間を第三者が見ていないので、意思能力の有無を証明するのが特に難しくなります。公正証書遺言であっても、公証人が証明できるのは作成日当日の様子だけなので、完全に防げるわけではありません。

対策:判断能力に不安がある段階で作成するなら、作成前後に医師の診断を受けて診断書を保管しておく。認知症の症状が出る前に、早めに作成する。これが最も確実な対策です。

事例④:自筆証書遺言の形式不備で無効

自筆証書遺言は、方式に厳格なルールがあります民法968条)。この方式を満たしていないと、どれだけ本人の意思が明確でも無効になってしまいます。

典型的な不備は次のとおりです。

  • 日付の記載がない、または「○年○月吉日」のように特定できない書き方
  • 氏名の自書や押印が欠けている
  • 全文を自筆で書いていない(パソコンで作成した部分が財産目録以外にある)
  • 訂正方法を誤っている

訂正方法については特に厳格で、「遺言者が訂正箇所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、かつ訂正箇所に押印する」必要があります。このルールを守らないと、訂正自体がなかったことになるため注意が必要です。

対策:法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、形式面のチェックを受けられます(ただし内容面のチェックはありません)。確実性を求めるなら、司法書士や弁護士に文案作成を相談するのが安心です。

事例⑤:遺言書の紛失・隠匿・改ざん

自筆証書遺言でとくに多いのが、保管をめぐるトラブルです。

自宅で保管していたら誰にも見つけてもらえなかった、相続人のひとりが自分に不利な内容だからと隠してしまった、改ざんされたのではないかと疑われた──こうしたケースは後を絶ちません。

せっかく作成した遺言書も、相続人に見つけてもらえなければ意味がありません。遺産分割協議がいったんまとまった後に遺言書が見つかると、さらに大きな混乱を招きます。

対策:法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用すれば、紛失・改ざんリスクを解消できます。公正証書遺言なら原本が公証役場で保管されるので、そもそもこのリスクはありません。どちらの方式でも、「遺言書を作成したこと」と「保管場所」は、信頼できる家族や専門家に伝えておくのがおすすめです。

事例⑥:作成後の状況変化で遺言が機能しない

小林先生が指摘したように、「遺言書はあくまで亡くなった時点の対策」です。作成時には最適な内容でも、時間が経つうちに状況が変わると、遺言書が機能しなくなることがあります。

典型的なケースは次のとおりです。

  • 相続させようとした受遺者が、遺言者より先に亡くなってしまった
  • 遺言の対象にしていた不動産を、生前に売却してしまった
  • 作成後に財産価値が大きく変動し、遺留分侵害になってしまった
  • 家族構成が変わった(離婚・再婚・出生・養子縁組など)

対策:数年に一度は内容を見直す習慣をつける。大きな状況変化があったら、そのタイミングで書き直す。予備的な条項(「○○が先に亡くなっていた場合は△△に相続させる」など)を入れておくと、想定外の事態にも備えられます。

事例⑦:遺言書に記載のない財産が出てくる

「遺言書に書かれていない財産」が後から見つかると、結局その部分は遺産分割協議が必要になります。

「これで全財産をカバーしたつもり」だったのに、忘れていた口座、把握していなかった有価証券、受取人未指定の生命保険などが出てきて、相続人同士で再度話し合いが必要になる──というケースは珍しくありません。

対策:作成前に財産目録を作り、預貯金・不動産・株式・保険・デジタル資産まで網羅的に把握する。遺言書には「この遺言書に記載のない一切の財産は○○に相続させる」といった包括的な条項を入れておくと、書き漏れがあっても対応できます。

遺言書のトラブル事例まとめ表

ここまでの7つの事例を一覧にまとめます。

トラブル事例主な原因有効な対策
①曖昧な表現財産・受遺者の特定が不十分具体的な住所・氏名で明記
②遺留分侵害特定の相続人への偏った配分遺留分に配慮+付言事項
③意思能力の争い作成時の判断能力への疑義早めの作成+医師の診断書
④形式不備で無効自筆証書遺言の方式違反保管制度の利用+専門家相談
⑤紛失・改ざん自宅保管のリスク保管制度または公正証書遺言
⑥状況変化受遺者の死亡・財産の変動定期見直し+予備的条項
⑦記載漏れ財産把握の不足財産目録作成+包括的条項

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自筆証書遺言でトラブルが起きやすい理由

事例で見てきたように、遺言書トラブルの多くは自筆証書遺言で発生します。その理由は主に3つあります。

1つ目は、法律の専門家のチェックが入らないこと。小林先生のインタビューにあった「意思表示ができなくなったら」のような曖昧な表現も、専門家の目があれば「成年後見制度を利用していた場合」といった形で修正できます。しかし自筆証書遺言は一人で作成するため、こうしたチェック機能が働きません。

2つ目は、形式要件が厳格なこと。全文自筆、日付の特定、氏名の自書、押印、厳格な訂正方法と、クリアすべきハードルが多く、一つでもミスがあれば無効になる可能性があります。

3つ目は、作成時の状況を証明できないこと。公正証書遺言なら公証人と証人2名が作成時の様子を見ていますが、自筆証書遺言は一人で作成するため、判断能力の有無や本人の意思を客観的に証明することができません。

「費用を抑えたい」「手軽に作りたい」という気持ちは自然ですが、自筆証書遺言を選ぶなら、専門家のサポートを受けながら慎重に作成するのが安全策です。

公正証書遺言でも起こりうるトラブルとは

「公正証書遺言なら絶対に安心」というわけではありません。小林先生が指摘したように、公正証書遺言でも防ぎきれないトラブルがあります。

最も多いのが遺留分の問題です。遺留分は法律で保障された権利なので、公正証書遺言だからといって無視することはできません。侵害された相続人が請求すれば、対応せざるを得ません。

次に多いのが意思能力をめぐる争いです。公証人が証明できるのは作成日当日の様子だけなので、「別の日は認知症の症状があった」「普段は判断能力が衰えていた」といった主張が出てくる余地があります。

そして、作成後の状況変化への対応です。受遺者が先に亡くなったり、遺言の対象財産を売却したりすると、その部分の遺言は機能しなくなります。公正証書遺言であっても、作成して終わりではなく、定期的な見直しが必要です。

「公正証書遺言を作ればすべて解決」と考えず、トラブル予防のための総合的な対策を取ることが大切です。

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遺言書トラブルを防ぐ5つの対策

事例を踏まえて、トラブルを未然に防ぐための5つの対策をまとめます。

対策①:早めに専門家へ相談する

これが最も効果的な対策です。遺言書の作成経験が豊富な司法書士・弁護士に相談すれば、曖昧な表現のリスク、遺留分の問題、形式不備など、ほとんどのトラブルを事前に回避できます。初回無料相談を実施している事務所も多いので、まずは話を聞いてみるところから始めるとよいでしょう。

対策②:財産を具体的に特定する

不動産は住所・地番まで明記し、預貯金は金融機関名・支店名・口座番号まで書く。受遺者は氏名だけでなく生年月日や続柄も添える。こうした具体性が、解釈のブレを防ぎます。

対策③:遺留分に配慮する

配偶者・子ども・直系尊属には法律で最低限の取り分が保障されていることを前提に、配分を考えます。やむを得ず侵害する場合でも、その理由を付言事項で丁寧に伝えれば、請求を思いとどまってもらえるケースもあります。

対策④:付言事項で思いを伝える

付言事項とは、遺言書に添える法的効力のないメッセージです。「なぜこの分け方にしたのか」「家族への感謝の気持ち」を書き添えることで、相続人が遺留分請求を思いとどまるケースは少なくないといわれています。法的効力はなくとも、感情面で果たす役割は大きいものです。

対策⑤:定期的に見直す

遺言書は「一度作って終わり」ではありません。財産の変動、家族構成の変化、法律の改正など、状況が変われば内容を見直す必要があります。数年に一度はチェックする習慣をつけましょう。気軽に相談できる専門家と継続的な関係を持つことも、有効な対策のひとつです。

遺言書のトラブルが起きてしまったときの相談先

万が一、遺言書をめぐるトラブルが発生してしまった場合は、状況に応じて適切な専門家に相談することが大切です。

相談先対応できる内容向いているケース
司法書士相続登記・検認手続・文案作成不動産を含む相続・形式確認
弁護士遺留分請求・遺言無効の訴訟相続人同士の紛争化
税理士相続税申告・評価税務面の対応
行政書士遺産分割協議書の作成話し合いが成立している場合

紛争化しそうな場合は、代理人として交渉ができる弁護士に相談するのが確実です。一方、まだ話し合いの段階であれば、司法書士や行政書士でも十分対応できます。

遺言書のトラブルに関するよくある質問

Q. 公正証書遺言は絶対に無効にならない?

A. 方式不備で無効になるリスクはほぼありませんが、作成時の意思能力を争われて無効と判断されるケースはあります。作成前後に医師の診断を受けておくのが安心です。

Q. 遺留分を無視した遺言書を作ったらどうなる?

A. 遺言書自体は有効ですが、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。請求されれば、遺留分相当額を金銭で支払わなければなりません。事前に遺留分の割合を確認し、可能な限り配慮した内容にするのがおすすめです。

Q. 自筆証書遺言書保管制度を使えばトラブルはなくなる?

A. 紛失・改ざんリスクは解消でき、形式面のチェックも受けられますが、内容面のチェックはされません。「法的に有効な文面か」「解釈の余地が少ないか」までは担保されないので、内容に不安がある場合は専門家に相談するのがおすすめです。

Q. 遺言書は何度でも書き直せる?

A. いつでも、何度でも書き直せます。新しい遺言書を作成すれば、古い遺言書と矛盾する部分は自動的に新しい方が優先されます(民法1023条)。状況が変わったら遠慮なく作り直して大丈夫です。

Q. 遺言書作成は何歳から可能?

A. 満15歳以上で、遺言能力(遺言の内容と法的効果を理解できる判断能力)があれば作成可能です(民法961条)。認知症などで判断能力が低下する前の、元気なうちに作成するのが理想です。


まとめ|トラブルを防ぐには「早めの作成と専門家への相談」

遺言書のトラブルは、大きく分けて次の7つのパターンがあります。

①曖昧な表現、②遺留分侵害、③意思能力の争い、④形式不備、⑤紛失・改ざん、⑥状況変化、⑦記載漏れ──このいずれも、事前の対策で多くを防ぐことができます。

小林先生がインタビューで強調していたように、「遺言書は亡くなった時点の対策」であり、作成時の工夫と作成後の見直しの両方が重要です。「自筆証書遺言は手軽だが解釈のトラブルが起きやすい」「公正証書遺言でも遺留分や意思能力の問題は残る」という前提を理解したうえで、自分の状況に合った方法を選びましょう。

最も効果的なトラブル防止策は、早めに専門家へ相談することです。経験豊富な司法書士や弁護士なら、曖昧な表現のリスク、遺留分の問題、形式要件のチェックまで、ほとんどのトラブルを未然に防げます。多くの事務所が初回無料相談を実施しているので、費用を気にせず話を聞いてみてください。

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